芳春院

 8月6日、東京ドームホテルで開催された「第4回いしかわ百万石の集い」は、盛会裡に打ち上げることができた。三宅藤九郎師、和泉元彌師、和泉淳子師たちによって開幕した「集い」は、仲代達矢さん、篠井英介さん、川中美幸さん、島津悦子さん、海老名香葉子さんという豪華な来賓のお言葉と旧交を温める参会者の会話で極めて盛り上がった。時間は2時間30分。北陸新幹線「かがやき」で東京から金沢に行く2時間半がとても短く感じられるのと同様に、瞬く間に過ぎた楽しい時間であった。石川県や県人会の担当の方々、実行委員会の皆様、この「集い」でお世話になった大勢の方々に厚く厚く御礼を申し上げる。

 さて、8月18日は、前田利家公夫人芳春院お松の方の没後400年祭が、金沢尾山神社で行われる。利家公が築かれた加賀前田家の基盤を固めるのに、芳春院の功績が大きかったことはよく知られており、平成14(2002)年のNHK大河ドラマ「利家とまつ」において、お松の方役の松嶋菜々子さんが発する「おまかせください」の一言は全国で親しまれた。大河ドラマの史実性についてはいろいろ議論があるところ、ドラマと銘打つ以上、程度の差こそあれ、脚色はあるのだろうが、「利家とまつ」の場合は、違和感を感ずることなく視聴できたように記憶する。この放映に至るまでには、大河ドラマ化実現のために、石川県庁以下県関係者挙げて努力した道程があった。当時東京石川県人会のリーダーで、NHK大河ドラマ放映推進委員会委員長を務められていた服部敏治さんから、私どもにまでも、機会ある毎にNHK幹部に利家公の大河ドラマ化をお願いするようにと指令が出たことを懐かしく思い出す。私は、何も貢献できなかったが、念願叶って「利家とまつ・加賀百万石物語」が電波に乗ったときには、プラハに在勤中だった。NHKの視聴はそれほど不自由ではなく、国際放送にかじりついて観ていた。

 没後400年の今年、石川郷土史学会副会長で、郷土史家の野村昭子さんが、8月1日付けで「芳春院まつ」と題する177頁の書物を北國新聞社から刊行された。前田利祐名誉会長も本書の中にお祝いの言葉を寄せられている。野村さんはいろいろな文献をよく調べられてお書きになっており、面白い史実やエピソードがふんだんに盛り込まれている上に、読みやすく、この素晴らしい女性が果たされた大きな役割を改めての認識するのに格好の一書と思える。北國新聞社が本書の帯につけた「この母ありて 加賀百万石は残った」はその内容を端的に示している。

 18日には、私も心弾ませながら、謹んで尾山神社拝殿に伺候しようと思っている。(2017年8月15日記)

石川県人 心の旅 by 石田寛人

石川県人会発行の月刊ニューズレター「石川県人会の絆」に2016年1月の創刊から連載中の記事をまとめたサイトです。

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