輪島大会

 11月27日、第16回全国石川県人会連合会輪島大会が輪島市で開催された。5年ごとに開いてきた全国大会は、加賀市、金沢市と続いて昨年開催の予定であった。しかし、コロナ禍が収まらないため、昨年は開催を断念して、今年に持ち越したものである。全国石川県人会連合会では、全国と輪島市の両方に実行委員会を設け、前者は輪島市出身の真鍋邦夫石川県人会副会長(会長代行)に、後者は輪島市の中山由紀夫副市長に委員長をお願いした。両委員会は、コロナ感染者が増減を繰り返す中で安全安心な大会を開催するため、多くの課題を克服しつつ準備を進めた。そして、当日。名誉会長の前田利祐御夫妻以下、全国各地の県人や関係者、海外からはブラジル、マナオス、アルゼンチン、ハワイおよびプラハの各県人会のメンバー、そして多数の県内の方々が輪島に集合した。


 約300名の関係者が集った式典は、輪島市文化会館で挙行され、輪島まだらと祭り太鼓の演奏で県外の参加者は故郷の土を踏んだことを実感した。関係者の挨拶のあと、県人会活動に貢献された方々に対する県知事表彰と感謝状贈呈、大会決議等が行われ、式典は1時間程で終わった。遠来の参加者にとって、輪島市民の温かい歓迎の心に触れたのが何より嬉しく、また県内各地から多くの方々に足を運んで頂いたのも大きな喜びであった。

 式典終了後、一本松総合運動公園体育館サン・アリーナに会場を移して行われた懇親会には馳浩知事も参加され、それぞれが故郷の友人と久闊を叙するとともに、迫力に満ちた御陣乗太鼓の演奏を楽しみ、まさに珠玉の時を過ごした。能登は食べ物が新鮮で実に美味しい。このように式典、懇親会を楽しくスムーズに挙行できたのは、坂口茂市長、森裕一市議会議長をはじめとする輪島市の皆様と多くの県民の方々のご尽力の賜物であり、懇親会終了後、坂口市長と中山副市長がアリーナの出口で参加者一人ひとりを丁寧に見送っておられたのには恐縮し、また、本当に頭の下がる思いであった。

 時間に余裕のあった参加者は、有名な輪島朝市で鰈の一夜干しや塩辛やエガラ饅頭を買って楽しみ、空に鳶の舞うキリコ会館を訪問した。キリコとは能登一帯の祭りで担がれる超縦長の大型移動灯籠で、夏には200以上のキリコ祭りが能登の各地を彩る。輪島のキリコは、大きいものは高さ12メートル強、重さ2トンで、細長く高い枠に貼った和紙に漢字三文字が大書されている。一般に、キリコと言えば「切子」すなわちカット技法で装飾加工されたガラス製品を指し、薩摩切子や江戸切子が知られている。これに対して能登の「キリコ」は灯籠で、中の灯りが和紙を通して輝くところに「切子」に通じる透明性が感じられる。このように能登のキリコは「切子灯籠」であり、これをつづめて「切籠(キリコ)」と呼ばれている。キリコ会館に多数展示されている大型のキリコは、漆を用い金属の細工物を飾った芸術作品で、これを造り担ぐ人々の心意気が肌で感じられる。

 さて、この輪島大会のパンフレットは、輪島漆芸美術館に置かれている輪島塗大型地球儀「夜の地球」を表紙写真にしている。これは直径1メートルの黒い漆の地球儀で、金色の地図が浮かんでいる。これは、輪島塗技術保存会長で人間国宝の小森邦衞氏をはじめ木地、きゅう漆、呂色、蒔絵そして沈金の各技法の名人とも言える輪島の専門家の方々が、金沢美術工芸大学の力も得て、伝統と創造が調和した記念碑的作品を5年かけて創り上げられ、今年お披露目された名作で、ぜひ多くの方々にご覧になって頂きたいと思う。今朝も、この写真を横に置いて輪島大会を思い出しつつ、妻が前に求めた輪島塗の赤いお椀で味噌汁を楽しんでいる。(2022年12月12日記)

石川県人 心の旅 by 石田寛人

石川県人会発行の月刊ニューズレター「石川県人会の絆」に2016年1月の創刊から連載中の記事をまとめたサイトです。

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