特別展「百万石!加賀前田家」報道発表会

 新年おめでとうございます。旧年中は、いろいろお世話になり、本当にありがとうございました。2年前の能登半島地震からの復興は懸命に進められていますが、更なる加速が期待されます。石川県人会としては、そのために力を尽くし、故郷石川の応援団として、また、私ども相互の親睦交流を深め、研鑽を重ねる組織として、努力して参りたいと存じます。本年も、どうかよろしくお願い申し上げます。


 加賀前田家に伝わる美術工芸品、古文書、甲冑類を維持・管理・展観する公益財団法人前田育徳会は.今年の2月26日に満百年の創立日を迎える。これを記念して収蔵品を多くの方々にご高覧頂く構想について、関係各方面といろいろご相談してきたところ、今年の4月14日(月)から6月7日(日)の間、上野の東京国立博物館平成館において特別展覧会を開催することとなった。主催は、東京国立博物館、前田育徳会、NHK、NHKプロモーション及び読売新聞社、特別協力が文化庁、そして協力が内田洋行とTOPPANクロレ。展覧会の名称は『特別展「百万石!加賀前田家』である。

 私は、たまたま、前田育徳会の理事長を仰せつかっているが、この展覧会についても、何らたいしたことはできなかった。ここに到ったのは、歴代前田家御当主、第18代前田利祐氏、第19代前田利宜氏の確固たる運営基本方針を受け、これまでの財団の評議員、理事、監事の方々のお導きで、事務局職員が営々と活動を継続し、内閣府、文化庁の御指導の下、石川県、東京都、目黒区、金沢市をはじめとする関係地方公共団体のご支援、徳川御宗家、尾張徳川家をはじめとする関係方面のお力添えを頂いて一歩一歩進んできた結果のしからしむところであり、本当に有り難いと思っている。

 この特別展の記者発表会が、昨日、1月19日に、展覧会会場に予定されている東京国立博物館平成館の中の大講堂で行われ、報道関係者を中心に多くの方々が集まった。発表会では、主催各団体の紹介のあと、東京国立博物館の浅見龍介副館長がこの博覧会を主催する趣旨を述べられ、ついで前田利宜氏が前田家の立場から挨拶された。これを受けて、東京国立博物館の貸与特別観覧室室長の福島修氏がこの展覧会の概要を説明された。そこでは、見どころとして次の5点が挙げられた。

①利家公をはじめとする歴代当主の甲冑や陣羽織で、百万石の「御細工所」で誂えた武具の粋にふれうること.

②「天下の書府」と評された圧倒的な蔵書、工芸標本「百工比照」など突出した石高を背景とした多彩な文化事業の成果の展開が見られること.

③古筆や名画、舶来品など驚くべき蒐集品、伝世の名刀、名物茶道具が勢揃いし、前田家だからこそ集まった希代の名物をまとめて味わう空間が現出されること.

④明治時代に旧前田家本邸洋館を飾った圧巻のコレクションで、大藩の威光を引き継いだ侯爵前田家の活動と前田育徳会設立(創立時は育徳財団)につながる歴史が紹介されること.

⑤旧蔵品も含めた加賀前田家伝来品の数々が、東京で60年ぶりに公開されること.

 その後、展覧会の出品の一部の映像の紹介と質疑応答があり、さらに、今年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟」で前田利家役を勤め、この展覧会の広報アンバサダー役に就かれた俳優の大東駿介氏が登場されて、挨拶されるとともにインタビューを受けられた。次いで、前田利宜氏、大東駿介氏と福島室長を囲むフォト・ムービーセッションがあり、前田利宜氏は個別取材も受けられた。

 前田育徳会・尊経閣文庫が所蔵する多くの美術工芸品、古文書、甲冑・陣羽織類は、前田家が最大の大名としての江戸での活動や加賀能登越中の領国統治の過程で蓄積されたものと見る方もあろうが、実際は、この貴重な品々を意図して蒐集し、所有して、大切に扱い、遺そうと努めてきた結果が、現在の所蔵品となっていると思われる。所蔵品は、刀剣甲冑等の武具も多く、それらは前田家のハードパワー的な政治が残したものと見えるかもしれないが、そうではなく、武の備えを前提としながらも、文化の力の偉大さを認識し、それによって幕府とのやりとりを重ね、藩政運営を行ってきた前田家統治の神髄を示しているように思われる。天下五剣のうちの一ふりとして名高い名剣の国宝「大典太」も、豪姫の病気快癒に効いたという説が伝えられている。かくして、前田家は、菅原道真の子孫と主張して、文化立藩を心掛け、ソフトパワーを活用してきたといえるであろう。

 百年前、前田家第十六代当主利為公は、藩政期から前田家に伝来する品々の維持管理に力を注がれるとともに、自身の活動で、古い名品や近代絵画や彫刻の作品を集められ、英断をくだして「育徳財団」を設立された。今回の展覧会は、旧蔵品を含む前田家伝来品によって、その藩政運営の足跡を振り返るとともに、前田家の採用した文化政策を将来に活かす方途を探る好い機会になることが期待される。それが、百年前に利為公が財団設立の際に願われたことと私は確信しており、そのため、4月に始まる2ヶ月間のこの展覧会に多くの方々が足を運ばれることを切望している。

 なお、この特別展と連動して、開催期間中、東京国立博物館の本館に特設された能舞台で、「東博能」として、宝生流御宗家をはじめ流派の皆様達による能狂言が頻繁に開催される。若いときに謡の稽古をしながら、全くものにならなかった私ではあるが、この能を拝見するのも大きな楽しみと思っている。(2026年1月20日記)

石川県人 心の旅 by 石田寛人

石川県人会発行の月刊ニューズレター「石川県人会の絆」に2016年1月の創刊から連載中の記事をまとめたサイトです。

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