五輪と輪島

 開催をめぐって議論があったオリンピックが無事終わり、パラリンピック開幕が間近となった。私はテレビで多くの種目を見て、世界最高ゲームの醍醐味を満喫した。鍛え込まれた若い人達の真剣なプレーは、我々に大きな力を与える。石川県人としては、津幡町出身の姉妹川井梨紗子、友香子両選手が、女子レスリングでそれぞれのクラスの金メダルに輝いたのに大喜びし、終盤の女子バスケットボールで銀メダル獲得に大きな力となった七尾市出身の赤穂ひまわり選手の活躍に心が弾んだ。また、各競技で活躍した多くの石川県出身や石川県関係の選手にも心から敬意を表するとともに、メダルを獲得した遠来の外国選手や我が国のアスリートには、その栄光を讃えたい。メダルに至らなかった内外の各選手にも、晴れの舞台に立って力を発揮したことに心から拍手を送りたい。さらに、五輪出場が叶わなかった世界中のアスリートにも、それぞれの競技への打ち込みと心身の鍛錬に対して深甚なる敬意を表したい。もちろん、アスリートを支えバブル方式の実行など工夫を重ねて安全安心な五輪実施に力を注いだ関係者の貢献も大きい。何せコロナ禍という制約のもとで開催されたオリンピックだから、トラブルもいろいろあったようだが、競技以外でも、多くの感動的な場面が繰り広げられ、素晴しい出会いも多く報道されて、これらは若い人達に価値ある記憶となって長く残るであろう。

 オリンピックの記憶では、私は若い頃白黒テレビで見た山中毅選手の水泳がいつも脳裏に浮かぶ。メルボルン大会、ローマ大会でマレー・ローズ選手とデッドヒートを演じて銀メダルに輝き東京大会でも入賞を果たした山中選手は誇らしい郷土のヒーローだった。

 山中選手の出身地輪島市で予定されている石川県人会全国大会の開催時期が迫ってきた。この26日に輪島市や石川県の担当者を含む実行委員会の関係者が集まり、開催に関して最終協議することにしている。前向きの決定にしたいが、客観情勢からやむなく慎重な判断をせざるをえない場合でも、輪島市役所や石川県庁の方々や各地域の石川県人会幹部の皆様の開催に向けた熱意と行動は特筆すべきであり、ただただ感謝申し上げたい。

 さて、高岡生まれの私の妻は、能登は高岡から近いにもかかわらず訪ねる機会が意外に少ないと言っていた。彼女は今の高岡市内にあった国府で越中守を勤めた万葉集編纂者の大伴家持を尊敬して、ことあるごとに万葉集を開いているが、家持時代の越中は能登も含んでおり、家持は能登を巡視している。そこで、妻は、十数年前、憑かれたように能登を見たいと独りでバスに乗り、着いた輪島の町を歩いた。帰途、輪島塗のお椀を二客分買ってきたが、その赤いお椀は、内側は滑らかな真円形で、外側はややゴツゴツして1センチほどの間隔で黒い縦縞が入っていて、指の懸かりがよく持ちやすい。すぐ自分たちが毎日使うようになったが、極めて堅牢で長年の使用に耐え、今日まで愛用している。これで毎朝食べる味噌汁はとても美味しく、その都度、心は輪島に飛ぶ。

 コロナは、私ども切なる願いとは逆に、全国的に感染者、陽性者の数は増加し、尊い命が失われているが、ワクチン接種や総合的な対策が進んで、その流行が下火となり、感染が人命を奪うことに繋がらなくなるのを期待したい。そのような状況を踏まえて、石川県人会輪島全国大会開催に関しては、妥当な判断を下せればと思っている。(2021年8月19日記)

[追記] 昨日開いた役員会で、輪島大会の一年延期を決定した。今年開催できないのは残念だが、早期にコロナが鎮まることを願い、来年は笑顔で輪島に集いたい。(2021年8月27 日記)                                                

石川県人 心の旅 by 石田寛人

石川県人会発行の月刊ニューズレター「石川県人会の絆」に2016年1月の創刊から連載中の記事をまとめたサイトです。

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