2025.01.28 15:00人間とAI 新年おめでとうございます。昨年は、元旦に能登半島地震が発生し、九月に奥能登は豪雨による大きな被害を受けて、石川県民、石川県人にとって、大変な一年でありました。震災や豪雨災害によって命を失われた方々には、心から哀悼の誠を捧げ、被災によって未だ厳しい生活を強いられている方々には、衷心よりお見舞い申し上げます。石川県人会は、能登の皆様に心を寄せ、復興のお役に立ち続けたいと存じておりますところ、本年も、どうかよろしくお願い申し上げます。 今年2025年には、2025年問題への対応が大きな課題となっている。団塊世代の方々の多くが後期高齢者となるなど人口の高齢化が顕著に進み、その影響が極めて大きくなって、それへの取り組みの強化が喫緊の重大事となっているのが、20...
2024.12.21 15:00剣道八段 11月19日、公立小松大学で北國新聞を開いたら、石川県産業技術専門校の清田敬夫さんが名古屋市枇杷島スポーツセンターで行われた剣道八段の昇段試験に合格されたという記事が目に入った。すばらしい。清田さんは10回の挑戦で合格されたと報じられているが、この試験でも、723人の受験者のうち合格者は10人のみだったという。これは極めて難度の高い試験なのだ。清田さんが今後ますます県内国内の剣道指導者として活躍されることを祈るのみだが、剣道を習ったこともない私が、この試験に格別の関心を持っているのには、以下に記す次第からである。 私の科学技術庁職員時代の上司武安義光さんは、私が採用された時、秘書課長だった。後に科学技術事務次官を務められた武安さんは、身長180センチ...
2024.10.23 15:00変わらない故郷 9月下旬の輪島市、奥能登を襲った水害には言葉を失った。1月1日の地震で大被害をこうむり、その復旧に全力傾注の最中に襲来したこの水害は14人の方々の貴い命を奪い、安否不明の方もあると報じられた。家屋は破壊され、水浸しとなり、多くの方々が生活の基盤を奪われた。重なる災害で生命を失われた方々の御冥福をお祈りし、県民県人の全力傾注によって能登の復興の速やかならんことをただただ願っているが、かく述べても、我が意には足りない。天災の破壊力のすさまじさが脳内に刷り込まれ、なぜ一年に二度なのかという思いが胸中にわだかまったままなのである。 「天地有情」、我々の世界は生きとし生けるものに満ちている。この言葉は、極めて高名な詩人、俳人、そして政治家がそれぞれ用いて、自ら...
2024.09.23 15:00夏の終わり 先月26日夕刻、松本楼での会合に出席するため、日比谷公園に行った。若干時間に余裕があったので、水中に鶴の像が立つ雲形池の廻りのベンチに腰掛けた。明るかった西の空の色がどんどん薄くなっていく。日は短くなった。池にはトンボが5、6匹飛んでいた。赤トンボかと思ったが、小さい塩辛トンボだった。これで私はすぐに「秋津らはここに飛び来て夏寒き高嶺の雪にこごえ死にけり」という短歌を思い出した。秋津はトンボの古称。眼前の景色とは全く違うが、トンボを見ると、四十年以上前に秘書官事務取扱としてお仕えした熊谷太三郎先生のこの一首が、いつも脳裡に浮かぶ。三十年ほど前、私はこの一首から想を得て、加賀騒動の顛末を「秋津見恋之手鏡(あきづにみる・こいのてかがみ)」という文楽台本を...
2024.08.27 15:00浪裏の宇宙 今月始め、飛行機で小松入りしたら、雲の切れ目から見えた白山がとてもきれいだった。白山は、雪を頂いた姿の美しさがその名前の由来だろうが、夏の青い白山は、墓参に帰郷する私に微笑みかけてくるようで、独特の懐かしさを感じてきた。最近は、一年中石川と東京を行き来し、夏にはそれが激しいので、車窓や機窓から青い白山を見る機会は多いのだが、この日は葛飾北斎の富岳三十六景のうち「凱風快晴」赤富士の青摺りのことが胸中をよぎった。この珍しい靑摺り赤富士は、一昨年1月本欄で触れたように、かねて関心をもってきたが、最近、東京墨田区の北斎美術館で種々お話を伺ったからである。 先月この欄でホルスト作曲の組曲「惑星」に新しく「ボイジャー」の楽章を付け演奏したことに関して、太陽圏を脱...
2024.06.23 01:20地震からの復興と郷土訪問 今月3日の朝6時半頃。地震アラートに驚かされ、すぐテレビを点けたら、富山湾が震源の地震の警報だった。スワ能登半島地震の再来かと、不安になって画面を見つめたら、6時31分震度5強の地震が能登半島の珠洲市や輪島市を襲ったことが報じられた。東京では全く振動を感じず、能登や富山での揺れも予知したものほど大きくはなかったようだが、やはり被害はあったと報じられた。1月1日の地震に関連した揺れとのことだったが、ともかく、早くこのように奥能登で地面が動く状況が収まることを祈るばかりである。 今、急がれる能登半島地震からの復興についていは、全国の方々に心を寄せて頂き、応援を受けながら、石川県挙げて懸命に取り組んでいるが、石川県立美術館をはじめ関係機関の協力のもとで前田...
2024.02.23 15:00東京タワーと定式幕 1月1日の能登半島地震では、亡くなられた方、負傷された方は数多く、また不自由な避難生活を余儀なくされている方々も大勢おられる。哀悼の意を表し、お見舞い申し上げる。早くこの地震禍が克服され、能登半島が力強く復興していくことを強く念ずるものである。加賀地方では、能登の支援とともに、自らの被害にも対処しなければならないが、来月の16日には、北陸新幹線の金沢・敦賀間が開業する。小松・加賀温泉・芦原温泉・福井・越前たけふ・敦賀の6駅に待望の新幹線がやってくる。そこで、2月5日の月曜日、北陸新幹線の延伸を広く報ずるとともに、能登半島地震からの復興を祈念して、夕刻から深夜まで、東京タワーを歌舞伎色に輝かせる企画が実施された。世界的照明デザイナーである石井幹子さんの...
2023.10.23 15:00テイカカズラ 9月のある日、県人会の仲間山田外彦さんから牧野記念庭園のパンフレットを頂いた。この庭園は西武池袋線大泉学園駅の近くにある。山田さんは、先々月の本欄「植物と生きる人々」を読み思い立って行ってきたと言われたが、NHK朝ドラ「らんまん」に名残を惜しんでのこととも思われる。同じ時期に私の妻も学生時代の友人で植物に極めて造詣の深い夏目和子さん山崎晃子さん達とこの庭園を訪れたが、その前に彼女達は「ハツユキカズラ」と「テイカカズラ」について情報交換を重ねていた。前者は後者の園芸品種で、いずれも8月に本欄で触れた「ヘクソカズラ」と同じ蔓性の植物、キョウチクトウ科に分類される。「ハツユキ」の方は、私にはあまり蔓性の感じがしない。ちなみに「ヘクソカズラ」はアカネ科だ。5...
2023.09.23 15:00スーパーブルームーン 令和5年8月つまり先月は、満月が2回あった。その2回目は8月30日から31日にかけて見られ、月に2回の満月は「ブルームーン」と呼ばれている。さらに、このタイミングで月が地球に最も近づいていて、満月が最も大きく見える現象「スーパームーン」が重なった。すなわち「スーパーブルームーン」と呼ばれる状態になったのであり、次にこうなるのは、2029年のこととか。それまで生きてはいたいが、なにせ肥満気味の私のことだから、どうなるかは分からない。そこで、今生の思い出と思って、30日の夜、東天に昇った月を見るべく表に出た。 屋根の間から見えるスーパーブルームーンは確かに大きい。今年2月の地球から最も遠かった満月に比較して直径が14%ほど大きく見えるのだとか。ブルームー...
2023.08.23 05:13植物と生きる人々 植物の好きな女性は多い。妻もその一人で、「原色牧野植物大圖鑑」の「合弁花・離弁花編」と「離弁花・単子葉植物編」の分厚い2冊を身辺に置いて、日毎に頁を繰っているが、妻の津田塾大学時代の同期の友人達には、もっともっと本格的に植物を愛好、研究する女性がいる。その一人が夏目和子さん。どんな草花にも深い関心を示し、根っから植物を愛するその姿に、妻は満腔の敬意を表しており、牧野富太郎、今世にあらば、彼女と仕事をしたいと思うに違いないような方である。いま一人は、牧野富太郎と同じ高知出身の立仙美幸さんで、大学寮で妻のルームメート。妻は親友中の親友として、長く付き合ってきたが、誠に残念なことに、16年前に他界された。彼女は、ヘクソカズラなるアカネ科の蔓性植物が、他の植...
2023.07.24 15:00夏のにおい 暑い日が続いている。こんな夏を我々老人が乗り切るには体力が必要だが、年とともにそれが失われつつあるのは、やむを得ないこととはいえ、いささか寂しい。視力、聴力もどんどん劣化している。視力は子供の頃から弱かったが、聴力には自信があった。しかし、今は、老いてなお鋭い音感を持つ妻に遠く及ばず、すぐにテレビの音を大きくしている。 そんな中で、嗅覚は、若い頃とそれほど変わらないと妙な自信を持っている。視覚に関しては、視力検査表で指し示されたカタカナを読み、大小の輪の開き口の方向を告げて、0.6とか0.1とか記録される。聴覚に関しては、イヤホーンを付けて、高さと大きさの違う多くの音を聴取し、結果がすぐグラフ化される。このように定量化されやすい視覚と聴覚に対して、嗅...
2023.06.24 15:00短歌 今月の3日と4日に行われた金沢市の百万石まつりは、絶好の天候に恵まれて、大勢の見物衆は祭りの楽しさを満喫した。この祭りは、10月14日から11月26日まで行われる「いしかわ百万石文化祭2023」(第38回国民文化祭 第23回全国障害者芸術・文化祭)への金沢市の応援事業としても位置づけられており、祭りの賑わいで、今秋の文化祭の豊かな実りを確信した。 百万石文化祭の期間には、石川県実行委員会主催事業として、開会式閉会式をはじめ、リーディング事業や障害者芸術・文化事業が多彩に繰り広げられる。また、市町実行委員会主催事業として、地域文化発信事業と文化団体事業が行われ、他にも特別連携事業や応援事業、協賛事業と多岐にわたって各種の事業が挙行される。私...