今月14日の全英ウィンブルドン男子フェデラー対ジョコビッチの史上最長決勝戦は、ジョコビッチの勝利となったが、最終セットはタイブレーク13対12の凄いスコアだった。8日の夜、錦織選手の4回戦を見ようとテレビをつけたら、その前の女子の試合がこれまたとても長引いていた。チェコ人同士の対戦で、プリスコワ対ムホバの一戦。これも最終セットが13-11の大熱戦で若手のムホバの勝利となり、彼女は俄然注目を浴びるようになったが、次の試合はストレート負けした。
我々がこの11月に訪問する予定のチェコは、アイスホッケーが大人気のスポーツであるが、テニス強国でもある。
今年、全豪オープンで大坂なおみ選手に決勝で敗れたペトラ・クビトバ選手はウィンブルドンで二度優勝しているし、かつては、男子のヤン・コデシュ、イワン・レンドル(国籍は米国)、女子のマルチナ・ヒンギス(国籍はスイス)、ハナ・マンドリコバ(現在の国籍は豪州)、ヤナ・ノボトナ、マルチナ・ナブラチロバなど偉大な選手を輩出している。
ナブラチロバは旧体制下の1975年に米国に亡命し、米国選手として活躍。チェコスロバキア時代も含めて四大大会には全英の9回を含めて18回も優勝している。彼女は、その後、チェコ国籍にも復して二重国籍になっており、プラハには彼女の名前をつけた通りがあると記憶する。
さてここで、ムホバ選手が、報道などでムチョバとも書かれていることに気付かれた方も多いと思う。これは彼女の姓Muchovaの中のchをどう読むかという問題で、我々はこれを「チ」と発音したくなるが、チェコ語では「ハ」に近い音である。よって、ムホバの方が、原語に近い表記と思っている。更に言えば、このChは、チェコ語ではアルファベットの1文字として存在する。ABC・・・のあと、HとIの間にChが入る。かくして、アルファベット26文字は、27文字に増加するが、これで全てではない。CDENRSTZの8文字にはハーチェクと呼ばれるのカタカナのレのような印を上につける文字が別に存在し、これらを含めて合計35文字がチェコ語のアルファベットである。
なお、ムホバに惜しくも敗れたプリスコバは放送の字幕では「プリスコワ」となっていたが(ネットではプリスコバと表記)、これはスラブ語圏に多くあるova等の付く女性の姓を、「オワ」と読み書きするのが慣用となってきたためと思われ、ナブラチロバも一般にはナブラチロワと表記される。
チェコでは、夫婦であっても親子であっても男性と女性は「姓」の形が違う。女性の姓は男性の姓にova(aは長母音符号付き)を付ける。男性形の姓がyで終わる場合は、それをaに変える。こうして、マンドリク令嬢はマンドリコバとなり、ノボトニー夫人はノボトナとなる。
それぞれの国の固有名詞をいかに発音するか。プラハは、英語ではプラーグ。そこの観光名所カレル橋は、英語でチャールス・ブリッジ、その下に、ドイツ語でモルダウと呼ばれるブルタバ川が流れる。言語と名前に反映されている歴史の歩みに直に触れうるのも海外訪問の醍醐味のひとつと思っている。(2019年7月18日記)
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