延伸北陸新幹線の車窓

 北陸新幹線が金沢以西に延伸した3月16日から2日後の18日。私は東京駅から延伸北陸新幹線に乗り込んだ。翌朝、公立小松大学の用務をこなすための小松までの直行である。この日、東京の用事はやや早く終わったが、乗継無しの「かがやき517号」で小松まで直行したかったので、19時56分の発車時刻を待った。勇躍乗った延伸北陸新幹線は、窓の外が真っ暗で、東京から金沢まではウツラウツラ、金沢を出たので目をカッと見開き、懸命に車窓を覗いた。外は暗くてよく見えない。しかし、遠く近くに見える灯りの感じで、列車が在来線と違うところを走っていることは認識できた。

 翌日は、早朝から公立小松大学の仕事をして、大学隣接の小松駅から東京まで乗継無しの11時45分発「はくたか562号」に乗車、在来線とは違う小松・金沢間の景色に目を凝らした。新幹線は速く、防音壁が一部視界を遮るが、透明になっている部分もあり、白山を長く仰げるのが嬉しかった。加賀笠間あたりから金沢までは在来線と並行に走るが、視点が高いので、窓の外が新鮮だった。小松金沢間は10分強。金沢から東京まで3時間弱。金沢以西から乗換えなしで東京駅に着けるのは体が休まる。

 小松以西については、開業のひと月前の2月16日、試乗会に参加して小松・敦賀間を往復してきた。列車が小松駅から出ると、左手に見える木場潟が印象的だ。昔、車窓から木場潟を見た旅行客が、「あんなところに大きな川が流れている。」と叫んだとか。延伸新幹線は、木場潟の近くを通るので、美しい湖であることがよく分かる。全体に敦賀までの新幹線ルートは、在来線とそれほど違っていないので、小松から西への車窓風景は、長年慣れ親しんできた光景と大きく変わるわけではないが、列車のスピードが違うので、景色の展開が速くて、別の土地を走っていると感じるほどだった。

 短時間停車した福井駅では、大臣秘書官事務取扱時代に、熊谷太三郎大臣に随行して、今はなき古い福井駅舎のステーションホテルで宿泊し、ひと気の少ない早朝のプラットフォームを窓から見ていた日々を思い出した。福井駅は改築され、更に今新幹線を迎える福井県の中心駅として装いを新たにしている。

 福井を後にした列車は敦賀に近づき、全長19,760メートルの新北陸トンネルを抜けたが、スピードが速いせいで、全長13,870メートルの在来線北陸トンネルより短い感じがした。かくして到着した敦賀駅は、在来線を走る特急サンダーバードと特急しらさぎの乗換駅。この両特急には、金沢・小松間の往復でお世話になってきたが、この度の北陸新幹線延伸で敦賀止まりになったのは残念だ。大阪や名古屋から北陸入りする旅行者は、ここで乗継ぐことになるが、総所要時間が短縮されるとは言え、乗継ぎはひと仕事のように見えて、何とか旅行者の負担を軽くする措置を講じてほしいという思いを強くした。

 帰路は、同行者と話すうちに、小松に着いてしまい、新幹線の速度に驚いただけだった。公立小松大学に勤める私としては、東京から新幹線のみで小松に着けるのは、とてもありがたいが、小松・金沢間の在来線からの車窓風景を見る機会が減るのはいささか淋しい。しかし、今般の金沢以西延伸を機にますます多くの方々が北陸を訪問されることを強く期待し、そのために努力したいと思っている。(2024年4月18日)

 

石川県人 心の旅 by 石田寛人

石川県人会発行の月刊ニューズレター「石川県人会の絆」に2016年1月の創刊から連載中の記事をまとめたサイトです。

0コメント

  • 1000 / 1000