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2025.07.29 15:00
無念無想の吹き矢
 この4月に大学の同級生仲間で会食したが、最近、こんな機会は、大体健康と病気のことが話の大半を占める。そこで、日本原子力研究開発機構の理事長を務めた斎藤伸三氏が、最近「吹き矢」に打ち込んでいると話してくれた。「吹き矢」は、とても健康によいというのだ。ネットによれば、「吹き矢」はスポーツであるとともに、ウェルネスでもあるとされていて、「日本スポーツウエルネス吹矢協会」という一般社団法人が組織されている。「吹き矢」は文字通りに矢を吹いて的に当てる競技であるが、協会のホームページには、「礼をする・構える・筒を上げる・息を吐く・息を吸う・吹く・息を整える・礼をする」という順序で「吹き矢」を行うとされている。的の大きさ、高さ、的までの距離も場合に応じて決められて...
2025.06.29 15:00
横綱大の里誕生
 大関大の里関が、五月場所で14勝1敗の好成績で優勝して、2場所連続優勝を果たし、横綱に推挙された。まさに私どもの願ったことが叶えられ、県人としてこの上ない慶びである。場所中の13日目の5月23日に13戦全勝となって優勝が決定し、25日の千秋楽で賜杯を抱くと、26日には横綱審議会が満場一致で横綱推挙を決定、28日には七月場所の番付編成会議と理事会で横綱昇進が正式決定され、30日には明治神宮で横綱推挙状授与式が行われて、八角理事長から横綱推挙状が渡され、雲龍型で土俵入りが神前で奉納された。テレビに食い入るようにして、雲龍型の奉納土俵入りを見たが、師匠の元稀勢の里二所ノ関親方の指導の賜物か、誠にひきしまった立派な挙措であった。 かくして誕生した石川県出身の...
2025.05.27 15:00
画家ルソー
 私がアンリ・ルソーという名の画家を意識しだしたのは、米大使館に勤務中、ニューヨークでの休みの日に、元東大総長の林健太郎参議院議員のお供で近代美術館を訪れた時であった。その際、ゴッホの「星月夜」の近くにあったルソーの作品を見て、面白い絵を描く画家だなあと思っただけだったが、あれから40年。前田育徳会の役員として、美術の勉強をしなければならないと、ネットで「山田五郎の教養教室」を聴き続けたところ、ルソーに関する五郎さんの説明が素晴らしく面白く、すっかりこの画家の魅力にとりつかれてしまった。 そんな折しも、日本経済新聞の日曜日の文化の頁で4月20日と27日の両日にわたって、ルソーの特集があったので、記事を読みふけった。その中で、ルソーに大きな影響を受けた我...
2025.04.27 15:00
大の里とレスリング姉妹と新田さん
 大相撲の三月場所で郷土出身の大関大の里が12勝3敗で見事優勝した。優勝決定戦の相手だった高安の健闘も素晴しく、二人優勝を願う思いすら胸中をかすめたが、やはり、郷土力士の優勝はこの上なく嬉しい。これで大の里の幕内最高優勝は3度目であるが、今回は大関での初めての優勝であり、次の場所で優勝すれば、横綱推挙が期待される。これからも、さらに稽古に励み、五月場所で朗報がもたらされることを祈りたい。 大の里は青色のマワシが爽やかである。そして、爽やかさは、マワシだけではなく、評論家の堀井憲一郎氏が書いておられるように、勝負のあとの表情にも見られて、それが何とも言えない。勝ってもその喜びをそれほど顔に出さないし、負けても過度に悔しい様子を見せない。一般的に、勝利の嬉...
2025.03.26 15:00
本郷邸の埋蔵文化財
 3月9日の日曜日、東京大学大学院人文社会系研究科と東京大学文学部が主催して「東大にねむる加賀藩本郷邸と江戸の宴」と題するシンポジウムが東大本郷キャンパス国際学術研究棟で開かれた。東大側の招きに応じて、前田利祐第18代前田家御当主石川県人会名誉会長が参加され、私もお供をした。 このシンポジウムの関係では、我が石川県人会は、昨年、事業委員会の企画「東京大学本郷地区埋蔵文化財キャンパスツアー」で、東大を訪問して、担当の堀内秀雄教授からいろいろお話をお伺した。今年はその続きとして、駒場リサーチキャンパスを訪問する計画が進んだ。実は、東大の埋蔵文化財調査室の建物は駒場にあって、そこに出土品が保存されている。そこで、その現場で出土品を見せて頂くことになった。 か...
2025.02.26 15:00
壁掛の順番
 前田家に伝わった大きい重要文化財「アエネアス物語図毛綴壁掛」は、今も世界の主流である西洋文明の源流のひとつギリシャのトロイア戦争を描いた連作の内の一枚である。その姉妹品は京都の祇園祭などで山鉾を飾っており、16世紀17世紀頃にベルギーで作られたものが、いかにして我が国に伝わったか、その謎を含めて、かつてNHKでも大きく取り上げられた。来年4月から東京国立博物館で開催予定の前田育德会創立100周年展覧会でも話題を呼ぶことになろう。この壁掛について、本欄で二度にわたって紹介したが、最新の調査研究によってその一部を訂正する必要が生じたので、ここに記述したい。多くの神様や人間の名前が出てくる煩わしさは、どうかお許し頂きたい。 古代ギリシャの「トロイア戦争」の...
2025.01.28 15:00
人間とAI
 新年おめでとうございます。昨年は、元旦に能登半島地震が発生し、九月に奥能登は豪雨による大きな被害を受けて、石川県民、石川県人にとって、大変な一年でありました。震災や豪雨災害によって命を失われた方々には、心から哀悼の誠を捧げ、被災によって未だ厳しい生活を強いられている方々には、衷心よりお見舞い申し上げます。石川県人会は、能登の皆様に心を寄せ、復興のお役に立ち続けたいと存じておりますところ、本年も、どうかよろしくお願い申し上げます。 今年2025年には、2025年問題への対応が大きな課題となっている。団塊世代の方々の多くが後期高齢者となるなど人口の高齢化が顕著に進み、その影響が極めて大きくなって、それへの取り組みの強化が喫緊の重大事となっているのが、20...
2024.12.21 15:00
剣道八段
 11月19日、公立小松大学で北國新聞を開いたら、石川県産業技術専門校の清田敬夫さんが名古屋市枇杷島スポーツセンターで行われた剣道八段の昇段試験に合格されたという記事が目に入った。すばらしい。清田さんは10回の挑戦で合格されたと報じられているが、この試験でも、723人の受験者のうち合格者は10人のみだったという。これは極めて難度の高い試験なのだ。清田さんが今後ますます県内国内の剣道指導者として活躍されることを祈るのみだが、剣道を習ったこともない私が、この試験に格別の関心を持っているのには、以下に記す次第からである。 私の科学技術庁職員時代の上司武安義光さんは、私が採用された時、秘書課長だった。後に科学技術事務次官を務められた武安さんは、身長180センチ...
2024.11.29 15:00
北斎と広重
 先月27日の我が国の衆議院議員選挙と今月11日の首相指名選挙、今月5日の米国大統領選挙と世の耳目が集中する大きな政治的選択が行われたが、その間も、私が役員を仰せつかっている前田育德会は、前田家ゆかりの美術工芸品古文書などの維持管理展観という常日頃世間の目を引かない地道な任務に懸命に取り組んできている。これもとても大切な仕事であり、私は役目柄、美術関係の知識を蓄えるべく努めているものの、蝸牛の歩みだが、このところ、山田五郎のyoutube「オトナの教養教室」をよく見ている。 山田五郎氏は、長年講談社で活躍し、テレビにもよく登場されているが、極めて博識な方であり、その口から発せられる言葉は古今東西の美術に及んで、視聴する者を飽きさせない。フランスの画家ア...
2024.10.23 15:00
変わらない故郷
 9月下旬の輪島市、奥能登を襲った水害には言葉を失った。1月1日の地震で大被害をこうむり、その復旧に全力傾注の最中に襲来したこの水害は14人の方々の貴い命を奪い、安否不明の方もあると報じられた。家屋は破壊され、水浸しとなり、多くの方々が生活の基盤を奪われた。重なる災害で生命を失われた方々の御冥福をお祈りし、県民県人の全力傾注によって能登の復興の速やかならんことをただただ願っているが、かく述べても、我が意には足りない。天災の破壊力のすさまじさが脳内に刷り込まれ、なぜ一年に二度なのかという思いが胸中にわだかまったままなのである。 「天地有情」、我々の世界は生きとし生けるものに満ちている。この言葉は、極めて高名な詩人、俳人、そして政治家がそれぞれ用いて、自ら...
2024.09.23 15:00
夏の終わり
 先月26日夕刻、松本楼での会合に出席するため、日比谷公園に行った。若干時間に余裕があったので、水中に鶴の像が立つ雲形池の廻りのベンチに腰掛けた。明るかった西の空の色がどんどん薄くなっていく。日は短くなった。池にはトンボが5、6匹飛んでいた。赤トンボかと思ったが、小さい塩辛トンボだった。これで私はすぐに「秋津らはここに飛び来て夏寒き高嶺の雪にこごえ死にけり」という短歌を思い出した。秋津はトンボの古称。眼前の景色とは全く違うが、トンボを見ると、四十年以上前に秘書官事務取扱としてお仕えした熊谷太三郎先生のこの一首が、いつも脳裡に浮かぶ。三十年ほど前、私はこの一首から想を得て、加賀騒動の顛末を「秋津見恋之手鏡(あきづにみる・こいのてかがみ)」という文楽台本を...
2024.08.27 15:00
浪裏の宇宙
 今月始め、飛行機で小松入りしたら、雲の切れ目から見えた白山がとてもきれいだった。白山は、雪を頂いた姿の美しさがその名前の由来だろうが、夏の青い白山は、墓参に帰郷する私に微笑みかけてくるようで、独特の懐かしさを感じてきた。最近は、一年中石川と東京を行き来し、夏にはそれが激しいので、車窓や機窓から青い白山を見る機会は多いのだが、この日は葛飾北斎の富岳三十六景のうち「凱風快晴」赤富士の青摺りのことが胸中をよぎった。この珍しい靑摺り赤富士は、一昨年1月本欄で触れたように、かねて関心をもってきたが、最近、東京墨田区の北斎美術館で種々お話を伺ったからである。 先月この欄でホルスト作曲の組曲「惑星」に新しく「ボイジャー」の楽章を付け演奏したことに関して、太陽圏を脱...

石川県人 心の旅 by 石田寛人

石川県人会発行の月刊ニューズレター「石川県人会の絆」に2016年1月の創刊から連載中の記事をまとめたサイトです。

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